製品開発ストーリー
2.MAOC、AOC開発ストーリー
MAOC、AOC開発ストーリー
1.アクリル酸またはメタクリル酸を塩化チオニルや五塩化リンと反応すると相当する酸クロリドが得られることは知られていたが、SO2ガスの処理、リン排水の処理に加えて、製品中にSやPが少しコンタミすることがわかっていた。
2.当社では、ベンゾトリクロリドを塩素源としてカルボン酸を相当する酸クロリドに変換する技術を保有しており、それを使っていくつかの製品を製造していた。この塩素交換反応をアクリル酸またはメタクリル酸に応用すると、条件によっては塩化水素付加体が多く生成した。
3.また、相当するカルボン酸から塩化チオニルを使って合成すると、酸無水物が大量に生成した。
4.文献検索すると、オルトフタル酸クロリド(OPC)を塩素源として使用する方法がヒットした。OPCは当社の主要製品の一つである。
5. この方法をメタクリル酸に適応すると、非常に収率良くメタクリル酸クロリド(MAOC)が得られた。
6.MAOC製造法のコストダウンを検討する中で、OPCの代わりにベンゾイルクロリド(BOC)を使えないかというアイデアが生まれた。BOCも当社の主要製品の一つである。
BOCを塩素化剤に使って酸クロリドを合成する方法(H.C.Brown, JACS 1938年)があったが、塩化チオニル法に押されて使われなくなっていた。実験室では副生する無水安息香酸を分離する必要があり、沸点の高い酸クロリドには使用しにくいという制約があるからだろうと思われる。
7.BOCを用いる方法は蒸留によって容易に留出できる酸クロリドの合成に適応すると好都合でありMAOCは正にそれに該当した。この方法をベースに検討を重ね、加熱したBOCの中にメタクリル酸を滴下し、生成したMAOCを直ちに留出させる所謂「反応蒸留法」を完成した。無触媒でありコンタミのない高純度のMAOCが得られた瞬間であった。アクリル酸からも同様にしてアクリル酸クロリド(AOC)が高純度で合成できる方法も確立した。